パチ依存症をこじらせて闇金から借金してた頃の話

パチ依存症をこじらせて闇金から借金してた頃の話-105

投稿日:2020年7月12日 更新日:

望んでいた状況を手に入れたはずなのに、新たに生まれた、虚無感や恐怖が私を苦しめます。そして向かった先は、決して戻ってはいけない場所でした。

※この物語は半分フィクションですが出てくるエピソードは実際に体験したことです。
いやほとんど実話です。
名前や団体名、組織名等は仮名になってます。
読んでいて気分を害したりする場合がありますのでその辺をご了承の上ご覧下さい。

丸い月

久しぶりに聞く、雑音や激しい大当たりの音が脳天を刺激します。

確かに湧き上がる、興奮に似た気持ちを抑えきれずにいました。

軍資金は8千円。

勝とうと思えば、打てる台は限られるでしょう。

と、言うよりも勝てる確率は著しく低いです。

しかし、そんなことはどうでもよい状態でした。

”ここに来れば、何かを取り戻せる”

もちろん、失うものの方が多いですが、私の頭の中には一切浮かんできませんでした。

そのような中、座ったのは「ファインプレー」。

羽物です。

気持ちの中では、いつものようにキングパルサーや北斗の拳を打ちたい気持ちでしたが、さすがに8千円の軍資金では不安でした。

まずは、羽物で増やしてからと考えます。

「よしっ!まずは1箱くらい出してからだな」

打ち始めると、チャッカーには良く入りますが、羽にはほとんど拾ってくれません。

飛ばし方が悪いのかと思い、細かくハンドルの位置を微妙に変えながら打っていました。

気がつくと3千円が消えてしまいます。

残りは5千円。

手のひらには、びっしりと汗をかいていました。

私は、台を離れることができません。

あいかわらず、チャッカーには良く入ります。

羽根にも、心なしかよく拾うようになってきてる様に感じました。

そして、4500円目の玉を上皿に流した時に”2チャッカー”に玉が入り、羽根が開いた時、2回目の解放した羽根に玉が2個吸い込まれて行きました。

「よしっ!」

そのうちの1個の玉が、真ん中の磁石に吸い付き、玉がVゾーンに向かっていきます。

「よっしゃ!」

やっとのことで大当たりです。

ラウンドも16ラウンド。

久々に感じる大当たりの快感に、全身がしびれるような感覚を覚えます。

全ての苦しみが頭の中から消えていました。

給料日に、一瞬のうちにお金が消えていく虚しさも、ミィに管理されているような情けなさも、今までの車上生活の苦しみも、闇金の恐怖も、すべて頭の中にはありません。

この先、何年も自分とミィの借金がなくなるまで、この苦しみと虚しさを感じながらいきていかなければいけない絶望感も吹き飛んでいました。

生きてる実感を感じることが出来たような気がします。

ドル箱に見えている銀色の玉を見ると、安心感に似た気持ちが脳を駆け巡りました。

その後は、出たり飲まれたりを繰り返しながらも、出玉をドル箱いっぱいにすることに成功します。

最初に感じた、ホールの自動ドアを通った時の興奮はありませんでしたが、変わりに安心感とゆったりとした快楽が全身を包んでいました。

「お客様、すいません閉店です」

上皿に残っている、半分ほどの玉を箱に移しジェットカウンターに玉を流します。

表示された数字は、約2000発。

カウンターに行き景品に交換すると、8千円分の特殊景品とキャラメルを渡されます。

換金所で交換を済ませた後、車に戻り改めて財布を確認しました。

数えると1万1千円。

収支でいうと、わずか3500円のプラスですが勝つことが出来ました。

久々の勝利の感覚に酔いしれながら、とても気分が良くなります。

「よし、このまま勝ち続ければOK!」

ここでしか味わえない、興奮と快楽に身を委ねます。

デキる男を演じていた時の自分を取り戻せたのです。

「そうだよ。とりあえず住む場所は確保できたし、闇金もないんだ。こうやって無理せず上手くやれば、パチンコ・パチスロも十分できるだろ」

エンジンをかけ、あてもなく車を走らせます。

今日は本当であればバイトの日です。

すぐに帰ると、ミィにバレてしまいます。

本来、バイトが終わる時間まで、時間をつぶさなければいけません。

久しぶりに、公園の駐車場に車を停め、後部座席に横になりました。

しかし、以前のような先が見えない恐怖や、窮屈さを感じることはありません。

私には帰る場所があるのです。

フロントガラスから、見える丸い月にかかる黒い雲が少し気になりましたが、気分は晴れやかでした。

本来の自分

朝、目が覚めると、まだとなりにはミィが眠っています。

時計を見ると5時30分、いつもより1時間以上早い起床でしたが、バイトに行かずにいたのと久しぶりのパチンコで勝利した興奮で体は調子良く感じました。

トイレに行こうとベッドから出ようとすると、ミィが目を覚ましました。

「う、う~ん・・・あれ?まさくんおはよう・・・バイトだったのに早く起きるなんて珍しい・・・大丈夫?」

「あ、あ、うん。大丈夫だよ・・・」

ミィにはウソをついてパチンコにいったことが罪に思い、思わず口ごもってしまいました。

借金をする時のウソには慣れていますが、こんな時のウソは苦手です。

トイレから戻ると、着替えもせずに最初にキッチンへ向かうミィの後姿を見て少し落ち着きを取り戻しました。

「あ、そういえば」

「なに?」

「今日、ちょっと残業で遅くなるかも。悪いけど今日は先に帰っていて」

「わかったわよ。バイト後なんだし、睡眠不足なんだから、無理しないでね」

「あ、あ、うん。わかったよ」

本当は、公園で帰る時間まで寝ていたので、それほど睡眠不足ではありません。

それにバイトをサボっていたので疲れは全くありませんでした。

いつものようにミィを会社の近くで降ろし、自分の会社に向かいます。

雪が降っていたため、いつもより少し渋滞していますが、イライラはしませんでした。

いつもより少し遅めに会社に着くと偶然、佐々木さんとほぼ同時に出社になります。

先に佐々木さんがタイムカードを押し、それを待っている間に薄いピンクのマニキュアが塗られている指を見て、厚手のコートの下に隠れている身体を思い出しました。

一瞬目が合い、お互いが目線をそらす瞬間がなんとも不埒が空間を作ります。

もう、しばらく佐々木さんとは会っていません。

そろそろ、誘わないと自然消滅する気がして、少し焦りました。

周りに誰もいないのを確認し、思わず声をかけようと思いますが、タイムカードを押し終えた佐々木さんはすぐに更衣室に向かったので声をことはできませんでした。

ほんの数日前まで、ミィのことを思い、佐々木さんとは終わりにしようと思っていましたが、そんな真面目な気持ちはほとんど薄れています。

私は、少しずつ”以前の自分”を取り戻しつつありました。

それは、自分にとって良いことなのかは、わかりません。

準備を終え営業をまわると、何となく調子が戻ってきているのを感じました。

その証拠に、契約の見込みにつながりそうな顧客を何件か目星をつけることに成功します。

想像以上に、上手くいっている気がしてきました。

借金だって自分が思っている以上に早く解決できる気がしてきます。

そうすれば、自分の思い描いている通りの日々を過ごせるでしょう。

腐敗した油の臭いにまみれなくても、良いのです。

根拠もなく、強くなった気がします。

パチンコ・パチスロも負ける気がしませんでした。

勝ち続ければそれを借金の返済に充てても良いでしょう。

そうすれば、給料日にほとんどお金が残らないという、情けない気持ちにならずにすむのです。

佐々木さんとは、ミィのことを思い、関係を終わらそうと思っていましたが、やはり続けることにしました。

あんなに、素晴らしい体を、あんなに濃密な時間を、終わらすことはできません。

こんな時、男は悲しいほどに単純です。

本能に抗うことは健全ではない気がしました。

佐々木さんと会う時は、バイトの日にサボって会えば問題ないでしょう。

幸いに、バイトから帰ってきた時は必ずシャワーを浴びます。

バレることはないと思いました。

問題は、「お金」です。

佐々木さんと食事をするにもホテルにいくにもお金は絶対に必要になります。

しかし、今の私にはそのような余裕はありません。

バイトに行けば、佐々木さんと会いにくくなりますし、いかなければバイト代は入ってこないのです。

これは、なんとかパチンコ・パチスロで稼ぐしかありません。

しかし、問題ないと思いました。

勝てばいいのです。

そして、必ず勝てると思います。

負けて以前のようになることは、頭の片隅にもないのです。

仕事は順調になり、住む場所の心配をせずに暖かい食事と寝床があり、ミィと幸せな毎日を送り、佐々木さんと濃密な時間を過ごす。

自分が思い描いている、デキる男を実現できるのです。

昼近くになり、トイレを借りようとコンビニに寄った時に雑誌のコーナーで立ち止まります。

手に取ったのは、パチンコ・パチスロ攻略雑誌です。

様々な数字や攻略ポイントが記事として書かれていますが、今の私にはあまり意味をもたらしません。

どんな台に座っても負けるわけがないと思っているからです。

車に戻り、鞄の中からおにぎりを取り出し、アルミホイルを剥がしながら思いにふけります。

「希望しかねぇ」

私はこの時、気付いていません。

”希望”は”絶望”の中でこそ綺麗に、そして、力強く光り輝くものです。

 

105話終了です。

 

今回は、パチンコ依存症・パチスロ依存症うんぬんよりも、当時の私の人間性の醜さやクズさを表した話です。

その人間性も、依存症によって形成されていったとも言えなくありませんが、おそらく私が元から持っていた性格や人格でしょう。

自分自身と向き合うということは、こういった部分ともしっかりと向き合うことが必要ですがとても難しいことです。

その証拠に、他人がこのような行動や考えを持っていたら、当時の私はその人のことを非難するでしょう。

そして、自分と向き合うというのは自分自身を非難することではなく、現状の自分を認め、受け入れることです。

そこから一歩目がはじまります。

 

もう少し続きます。

106話↓

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