ついに、3件目の闇金からお金を借りてしまいました。3件の闇金の元金の合計は90,000円です。8日後には利息15,000円、さらに10日後には2件分の利息30,000円が、かかります。プラス洋平には、20,000円借りています。これは来月の給料日に返済する約束です。
このピンチどう乗り切るのでしょうか。
※この物語は半分フィクションですが出てくるエピソードは実際に体験したことです。
いやほとんど実話です。
名前や団体名、組織名等は仮名になってます。
読んでいて気分を害したりする場合がありますのでその辺をご了承の上ご覧下さい。
理由
その日、営業が終わり部屋に戻っている途中、携帯が鳴りました。
番号を見ると洋平です。
「おつかれっす。兄貴終わりました?」
「おう。今日はサンキューな。ホント助かったわ」
借金をした相手にウソをつくのは慣れています。
「いえいえ、とんでもないです。お母さん大丈夫でした?」
「うん。大丈夫だ。おかげで病院行けたみたい。洋平のおかげだよ」
「兄貴、飯どうするんですか?金、無いんじゃないですか」
「いや、少しは残ってるけど、まだ何もきめてないな」
「まじすか、ラーメンどうですか?うまそうなところ見つけたんスよ。大丈夫すよ、おごります」
「お、おう。ラーメン、いいな」
この時、先輩としてのプライドはなくなっています。素直に奢ってもらおうと思いました。
「じゃぁ店の前で待ち合わせましょう。住所は○△×町□丁目のホームセンターの前にあります」
「わかった。向かうわ」
洋平は、イイやつでした。というよりも、イイやつすぎて、営業には向かないタイプです。ここぞ、という時に押しの一手が足りないため、何度も契約を逃してくるようなこともありました。自分の手中に収めている案件を成績が悪くクビ寸前の同僚にその案件をフリ、助け、自分の昇給を逃すような、悪く言えば「甘い」ヤツです。そして、そこそこ真面目であり、ギャンブルや風俗や合コンなど遊びはするのですが、自分を見失うようなことはしません。いつもそこそこで手を打ち、きっちり身の丈にあった遊びに抑えるヤツです。
私は、洋平にとても興味がありました。それまで基本、後輩の面倒などほとんど見ないタイプであり、先輩であろうと同僚であろうと、蹴落としてでも自分の成績を上げてやろうというタイプです。ましてやアドバイスなど有益な情報を他人に教えるなど、皆無です。そのためほとんどの人が私には近寄りませんでした。飲みに誘われることもほとんどありません。誘われたとしても、もっぱら飲みにいくのであればパチンコ・パチスロという状態だったので断っていますが・・・。
そんな中、洋平だけは違いました。入社した時から、他の人には声をかけず、仕事のこと、営業のコツ、そしてプライベートのことまで、積極的に私に相談してきました。最初は鬱陶しいと思っていましたが、まっすぐに頑張っているその姿を見て私は羨ましかったのだと思います。
そんな私とは真逆の洋平が、なぜ私を慕っていたのか、未だにわかりません。
私はただ、単に洋平の事を羨ましく思い、なぜ、ギャンブルや他の遊びにのめりこまなかったのか興味があっただけでした。
ラーメン屋につくと洋平が待っています。
「兄貴、早く入って食べましょ。おれ、腹へりました」
「おう、おれも減ったわ」
のれんをくぐると満席に近く、2席だけ空いたテーブル席に通されます。
「兄貴、どうします?なんか、しょうゆがうまそうですねぇ」
「だな、しょうゆにするわ」
「ですよね。おれもそうします。ギョーザもいきますかっ!?」
「おう、いいぞ」
「チャーハンもいきますかっ!」
「わんぱく食べ盛りかっ(笑)おれは遠慮しとく」
「まじすかーじゃあやめます(笑)」
明らかに、私に気を使い洋平はそう言って来ました。私は普段、洋平からおごってもらう事は無く、一緒に食事をしてもお金を受け取りません。それを知ってか、私が遠慮すると思ったのでしょう。
「兄貴、聞いていいですか?」
「?なんだ?」
「どうやったら、女にホテル誘ってOKもらえるんすか??」
「しらん。そんなのあるんだったら俺が知りたい」
「ですよねぇ・・・」
「どうしたんだよ。なんか失敗したのか?」
「いや、いつもいい感じになってホテル行っていい?聞くんですけど断られるんですよ。それ以来、ビビっちゃって・・・」
「ホテル行っていい?って聞くからじゃね?」
「じゃぁなんて聞くんですか?」
「ホテル行こう!だろ」
「えーっ!?なんか強引すぎやしません?」
「バカだな。女がホテル行っていい?て言われて、行くってやつは、ほとんどいないわ。仮に行きたくてもウンて言えないだろ」
「そうですかねぇ・・・。行きたいのに断ってるってことですか?」
「そうだよ。女はめちゃくちゃヤりたくても、断る」
「うーん・・・」
「そういう時は理由がほしいだけなんだわ、たとえば終電ない、そういう雰囲気になってる・・・だったらホテル行っちゃってもしょうがないよね。みたいな」
「なぁるほど」
「営業もそうだべ、買いませんか?とか契約しませんか?どうします?っていうと断られるべ」
「はい」
「ちゃんと、理由を用意してあげるんだよ。契約するとこうこう、こういうメリットがあります、だから必要なんですよってやつ。相手も不安な訳じゃん。」
「ほうほう」
「その時に契約しますか?どうします?じゃなく契約しましょう!だろ?」
「ですね」
「相手は契約しても、わからないわけだから不安なの。だから安心したいわけよ。その時に洋平さんがこういうメリットがあるって言ってたから大丈夫だなっていうのが必要なわけよ」
「ほう」
「ほんとはいいけど軽い女みたいでイヤだなって思ってるんだよ。だけど終電ないし、こんないい雰囲気だったらしょうがない。私のせいじゃないよねっていうのがあればOKって事」
「なるほど!」
「せっかく、いい状態になって相手にどうする?って聞いたら、決定権は相手になるだろ。そうしたら、軽い女て、見られたくないから断るのさ。」
「あくまでもホテルに行ったのは、終電無くなって、いい雰囲気になって、誘われたからなんだって理由が必要ってことだな」
「兄貴、どうしたんスか、めちゃめちゃカッコいいじゃないですか(笑)」
「なんだ洋平、バカにしてんのか(笑)」
「いや、ラーメン食ってのに超アツいから・・・(笑)」
「ま、まぁ」
ちょっとウザイ先輩だなと少し反省し、すぐに話題を変えましたが、洋平のおかげで今日一日の恐怖感は無くなり、リラックスする事ができました。
「兄貴、ちょっと打ちますか?じゃなくって、打ちましょう。代打ちお願いします。」
「お、おう?」
「理由は・・・。なんかめちゃ打ちたいっすわ。資金はお互い一万で、兄貴、勝ったら半分あげます。かわいい後輩がお願いしてるんだからいいじゃないですか」
「わかったよ(笑)」
「兄貴、最近なんか変ですよ。ここで勝って元気出してください。もちろん負けても返してくれなくていいですよ」
「なんか、悪いな」
「もし、二人ともガッツり勝ったら、デリヘル呼びましょう。この間、呼んだところ良かったですよ」
「ま、そうだな(笑)よしっ行くか!」
洋平はイイやつです。きっと最近の私を見て、何かを察していたのでしょう。いつも通りの私に戻ってほしくて色々考えて事だと思います。きっとパチンコが打ちたいのでは無く、私に元気になってほしかったのだと思います。
それが、良いとか悪いとかではなくその気持ちは十分に伝わってきました。
そして、結果は・・・。
私が42,000円の勝ち、洋平が8,000円の勝ちでした。
ですので、洋平に半分わたしても、財布の中には、23,000円ちょっとのお金が入っています。
「で、どうするんだ?デリヘル呼ぶのか?」
「いやぁ、今日はやめます。なんか理由ないです」
「な、なんだよそれ理由って。洋平、やっぱりさっきのバカにしてんだろ!」
「ち、ちがいます、ちがいますっ!」
「笑」
「笑」
「あ、そうだ今日、朝借りた20,000円返そうか?」
「いいですいいです。兄貴持ってて下さい。勝ってくれてすでに20,000円戻って来てますし。それに出張まだ2週間位あるじゃないですか。飯代残って、よかったよかった。」
「洋平サンキューな」
「いやいや、こちらこそっスよ(笑)」
と、ほんのひと時の出来事です。しかし何も解決していません。闇金の支払い、生活費の支払い・・・。まだまだ問題は山積みです。この間にも地獄はどんどんこちらに向かってきています。私には「ほっ」としている時間や余裕などなかったのです。このあとそれをイヤというほど味わっていきます。今はまだ、ただの束の間です。
以上24話終了です。
今回は洋平とのエピソードでした、当時の自分にとって後輩でもあり、一番の友人でもありという仲でした。洋平は真面目という性格ではありませんでしたが、いいヤツでわきまえたやつでした。ギャンブルも女遊びもここまでというラインで引くことができ、その中で十分に楽しんでいました。私は逆にのめりこみ生活が無茶苦茶だったため洋平を見て凄く羨ましいなと思っていました。私がギャンブルの存在を悪く言わないのは洋平と出会ったのが大きいかもしれません。私のようにパチンコ依存症・パチスロ依存症になるような人ばかりではないことを間近で見たからです。洋平は確かに自分の許容範囲で、ギャンブルも遊びも楽しんでいました。
まだまだ続きます。
25話↓
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