パチ依存症をこじらせて闇金から借金してた頃の話

パチ依存症をこじらせて闇金から借金してた頃の話-52

投稿日:2019年7月7日 更新日:

洋平との転職前の最後の飲み会を、スロットの代打ちでの大勝利と、洋平のおごりでの飲み会で締めくくることが出来ました。お金を減らすことに恐怖を感じていた私は、そのことにとても安堵します。そのおかげもあり、財布には約4万4千円の現金を収めることができました。しかし私は安心感の中に、プライドを保てなくなっている自分に情けなさを感じ脱力感を覚えてきています。

※この物語は半分フィクションですが出てくるエピソードは実際に体験したことです。
いやほとんど実話です。
名前や団体名、組織名等は仮名になってます。
読んでいて気分を害したりする場合がありますのでその辺をご了承の上ご覧下さい。

失い

駐車場を出てすぐ、マクドナルドの駐車場に車を停めます。ほとんどアルコールを口にしていないので、酔ってはいませんでしたが、念のため車の運転をするのは控えようと思いました。

おそらくアパートに戻っても予定通りならば施錠されており部屋に入ることは出来ないでしょう。そう考えるとこれからの生活がどうなってしまうのか不安になり、改めて全身が恐怖に支配されます。

現在の時刻は深夜3時。会社に行くまではまだまだ時間がありました。少し仮眠を取ろうと考えるとほぼ同時に深い眠りに入ります。

目が覚めて携帯電話で時間を確認すると、5時過ぎでした。すぐに駐車場を出て車を走らせると、そのままアパートに向かいます。もしかするとまだ鍵は施錠されていないかもしれません。部屋に戻ってもなにもすることはなく、何も状況は変わりませんが確かめたい衝動に駆られました。

部屋の前に着くと一枚の封筒が、透明なビニール袋に入れられガムテープで貼られています。

急いでそれをドアから剥がし、中の封筒を読んでみました。

”安倍 正貴 様

再三の御入金のお願いとご連絡を差し上げましたが、期日までにご連絡及び御入金の確認が出来ないため、鍵の施錠をさせていただきます。尚、○月×日までにご連絡、御入金が無い場合は賃貸契約解除させて頂き強制退去していただく旨、ご承知おき下さい。”

わかってはいましたが、改めて自分の部屋に入れないショックと、このまま自分の居場所を失ってしまう絶望感を感じました。

こうやって私のなかから少しずつ”自分”というものが失われていきます。

車に乗り込み水飲み場のある公園に向かいます。いつものように布団で眠ることができない。いつものように自分の居場所がないという現実に直面し、大きな失望感と脱力感が体を包みました。

私はそれに抵抗することなく、それに飲まれ同化していきます。抵抗するとそこにさらに恐怖感や痛みがプラスされ私を飲み込んでいくのです。

こんな時には、抵抗せずに受け入れるという対処法にも少し慣れてきました。

公園の水飲み場で顔を洗った後、辺りを見渡し人がいないのを確認して急いで足を洗います。2日風呂に入れていないので、せめてと思い足を洗いましたが、空しさと誰かに見られたくないという恥ずかしさでいっぱいになりました。

プライドがわずかに残っていますが、たくさんの現実にそれを保つことができません。

車に戻るとファブリーズを全身に吹きかけるのを忘れませんでした。

牛丼屋で朝食を取り、そのまま会社に向かいます。いつもより少し早い出社でした。まだ誰も来ていないだろうと思い会社に入りましたが、すでに女性事務員が出社していました。

「おはようございます。」

「あ、おはよう」

「あべさん、早いですね」

「あ、うん、ちょちょっと資料用意しなければならなくって・・・」

「そうなんですね」

朝の何気無い会話ですが、私は無意識にその事務員と距離をとっています。風呂に入っていないことによる体臭を気にしていました。

営業の準備をしていると洋平が出社してきます。

「兄貴、あざーず」

「おう、おはよう。二日酔い大丈夫か?」

「あーすいやせん・・・正直、後半全然覚えてないす・・・」

「まぁアレだけ飲めばな笑」

「すいませんでした・・・」

「いいよいいよ。それより今日までか?」

「いや、一応明日までっす。来週たちます」

「そっか・・・ご苦労さんだな」

昨日まで感じていた洋平を避けたい気持ちも嫉妬もありませんでした。それはきっと、とりあえずのところ財布に現金が入っているからでしょう。もし洋平が代打ちに誘ってくれなかったら、大勝できなければ、飲み代を洋平が奢ってくれなければ、こんな穏やかな気持ちで話せないところでした。

席に戻る洋平の背中を見ていると、一瞬自分の器の小ささや今現在の状況が頭をよぎり思わず自分を責めたくなりましたが慌ててそれを掻き消しました。

その時私はこう思います。

「もう、普通の人としての心も失っちゃったのかなオレ・・・」

希望の向こう

会社を出て営業を回りますが、いまいち調子が出ません。紹介する商品やサービスはあるのですが、案内せずに挨拶だけして訪問先を離れました。そのため大幅に時間があまり、いつも行く公園の側に車を停めてボーっとしています。

ブランコに乗っていた子供が降りて、ブランコの揺れがだんだんと小さくなり、止まりかけた時に携帯電話が鳴りました。番号を見ると会社からです。

「あべです。お疲れ様です」

「お疲れ様です。あべさん宛に電話が来てまして、連絡ほしいそうです」

「は、はい・・・」

一瞬、闇金では無いかと不安になりました。しかし支払いは滞ってないはずです。

「電話番号が○△×ー×△○×お名前が・・・・」

アパートの管理会社からでした。

「はい、わかりました」

私はアパートの管理会社に電話をしませんでした。連絡をしたところで滞納している家賃を払うことは出来ませんでしたし、払える目処も全く立たないからです。

管理会社も施錠はしたものの、滞納した家賃を払ってもらわないと困るはずです。当然、連絡をするとその話になるでしょう。

私はこれ以上、自分を追い込みたくありませんでした。もちろん連絡をして、払う意志を伝えたりどのように支払うか伝えることが必要ですし、それが普通で当たり前ですが、この時の私はそのような考えに至りません。逃げることができるものであれば全て逃げ出したかったのです。

嫌な現実から目をそらし、逃げ出したまでは良かったですが、連絡はしなくても頭の奥では気になってしまい、また脱力感が全身を包みました。

しかし私に対処法はなく、抜け殻のように窓の外を見つめ、この状態を受け入れるだけです。

夕方近くになり、会社に戻ると事務的に後処理を済ませ、タイムカードを押そうとした時でした。

「あ、あべさん!」

女性事務員が声をかけてきます。私はまたしても無意識に物理的距離をとろうとしました。

「な、なにっ!」

「あ、帰るところなのにすいません。これ、今日連絡来てました。2件とも明日連絡ほしいって」

見ると2件とも出張先で見込み客になった会社です。もしかすると申し込みの連絡かもしれません。

「あ、ありがとう。明日連絡します」

「はい、お疲れ様です」

私は気分が良くなりました。もし2件とも新規獲得ということになれば、会社全体の数字が伸びていない中、かなり大きな結果となります。そうなれば、私の社内の評価は上がるでしょう。また、会社内のピリピリしたムードの中、自分ひとりで優越感に浸れるオマケも付いてきます。

私は車に乗り込みまっすぐに銭湯へ向かいました。気になっていた汗を流し、湯船に浸かると束の間の安心感が訪れた気がします。

銭湯を出た後、スーパーに行き惣菜コーナーへ向い半額のシールが張られている弁当を物色しました。

「おっデラックス幕の内あるじゃん、ラッキー!」

まだ獲得が決まったわけではないですが、久しぶりの良いイメージに私の気持ちのスイッチが切り替わりました。まだモヤは残っていますが、わずかに光が見えたイメージです。

こうなると気持ちが乗ってきました。

車の中で幕の内弁当をたいらげた後、今の状況を改めて考えます。

まず取り急ぎなんとか解決したいのは、アパートの家賃2か月分と2件の闇金です。特に闇金2件は何とか元金含めて返さないと、利息だけでつぶれてしまうのは目に見えていました。

もちろん車での生活をこの先も続ける訳にはいかないので、これも考えなければいけません。

とはいえ手持ちの現金は約4万円。闇金の借金を元金含めて返済することは不可能です。給料日までは約2週間と少し。まともに考えればこの時点で詰んでいます。

最近の私であればここで絶望感に飲み込まれ、それと同化することを受け入れているはずでした。

しかし見込み客からの連絡で気分の乗っていた私は、今までとは違う”希望”を感じていました。根拠の無い前向き感が久しぶりに湧き上がっていたのです。

「よし、絶対乗り切ってやるっ!」

細かい計算はしませんでしたが、とにかくお金を稼がないといけないと考えました。今の収入では現状を打破することはできません。

私はすぐにコンビ二向い求人誌を手に取りレジに並びます。なぜかこの時点で私の中にある問題を全て解決できる気になっていました。

いつもならパチンコに行き、絶対に負けられない戦いを挑み、そして絶対に負けて傷を深くしてきました。だけど今回の私は違います。

会社が終わった後、バイトをしてとにかく収入を増やし、まずは闇金をクリアにすれば全ては何とかなるはずだと考えました。

考えているようで何も考えられていない私は、求人誌を買っただけでまだ開いてもいないのに、今私が抱えている全ての苦しみから解放される気になっていました。

車に戻り、すぐさま求人誌を1ページずつめくっていきます。そこで2件ほど深夜の倉庫のバイトを発見し、そろそろ見るページも少なくなってきたところである求人を発見します。

『飲食店の厨房内の排水溝のメンテナンス及び清掃・日給5千円時間22時から3時で週3日以上、週払い可』

思わず目を疑いました。先ほどチェックしたところよりはるかに給料も良いですし、週払いも可能です。

一ヶ月も働けば闇金を返すことが出来るはずと感じ、テンションが上がりました。もしここでバイトが出来れば、プライドを取り戻せるはずです。情けない思いをしなくて済むはずです。今まで通りの生活も取り戻せるでしょう。

私はすぐに求人誌についている履歴書を書き込み、証明写真を撮りに行きます。意外と高く800円かかりましたが、現状を打破するためしょうがありません。正直少し躊躇しましたが、これからのことを考えると迷うことなく硬貨を投入できました。パチンコのサンド投入するお金とは訳が違います。これは前向きな投資でした。

深夜でも解放されている公園の駐車場の端っこに車を停めます。少し冷えてきたためトランクから毛布を取り出し後部座席に寝転びました。

窮屈で足を折り曲げないといけないその空間は、少し気分を下げさせます。しかし今の私には希望があるのです。

改めて求人誌を開き、その会社の電話番号を携帯に登録し、私は眠りにつきます。窓から見る星はいつもよりはっきりと輝き、黒い空の中で明るく光っている気がしました。

 

52話終了です。

 

追い込まれて、どんどん失っていき、その状況をどうにかする方法としてやっと私はバイトをしようと行動をしました。当然もっと早い段階でそうするべきでしたがパチンコ依存症の私は、それよりもパチンコ・パチスロでした。

まぁそれでも大きな一歩ともいえます。しかしここで私は大きなミスをしています。見込み客にしてもバイトの求人にしても、まだ何も決まっていないのです。

まだ何も決まっていないことを自分で都合よく想像し、たいした計算もせず勝手に全て解決した気になっています。目をそらし逃げ出すことばかり考えていた私は自分のことをなにもわかっていませんでした。

そして悪い流れは、悪い状況を生みます。久しぶりに起こした前向きな衝動でしたが、これがきっかけでこの後私の地獄はさらに深く沈んでいきます・・・。

 

まだまだ続きます。

53話↓

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