パチ依存症をこじらせて闇金から借金してた頃の話

パチ依存症をこじらせて闇金から借金してた頃の話-65

投稿日:2019年10月6日 更新日:

新規顧客の導入も無事に終わりましたが、佐伯さんとの再会やパチンコでの負けもあって5万円以上あった手持ちのお金が1万円を切ってしまいました。せっかくの普通の生活に戻れるかもしれないチャンスを自ら棒にふります。それと同時に一度は消えかかった地獄の使者が刻々と近づいているのを私は気付いていません。

※この物語は半分フィクションですが出てくるエピソードは実際に体験したことです。
いやほとんど実話です。
名前や団体名、組織名等は仮名になってます。
読んでいて気分を害したりする場合がありますのでその辺をご了承の上ご覧下さい。

新たな暗雲

路肩に車を止めた後、ハザードを点け、サイドブレーキを引き、電話に出ます。

「もしもし、あべです・・・」

電話にでる前、番号を確認すると知らない電話番号で、しかも市外局番は”東京”です。一瞬借りている闇金のことがよぎりましたが、闇金は全て完済したはずです。

しかし私は不安に包まれました。不安の根拠はわかりませんが、とにかく怖かったのです。心理的に財布の中身が少なくなっているのも影響しているのでしょう。

「もしもし、クレジットのエルメスと申します」

「は、はい・・・」

「当社はキャッシングの会社でして、今、無造作にお電話しています。もし緊急でご入用がありましたら、ご相談お受けしたいと思いまして。」

「あ、あ、はい・・・」

当時、闇金業者に一度でも借りたり問い合わせをすると、瞬く間に全国の闇金業者にそのリストが出回っていました。

恐らく”カモリスト”としてその名簿が取引されていたはずです。私も、もれなくそのリストに名を連ねていたはずです。

「あ、あ、はい・・・」

「いかがですか?ご入用でしたら直ぐに審査いたしますよ」

一瞬、「お願いします」と言いかかりました。つい2日前まで5万円以上あった現金が1万円以下になっていたのもあり、”不安”になっていました。少しでもお金が多くあればこの気持ちを払拭できるはずだからです。

「いえ、いや、あの・・・今のところは大丈夫です・・・」

「そうですか・・・では、もしご入用になりましたら、このお電話に連絡下さい。直ぐに審査いたします」

「わかりました」

私は、ギリギリのところで踏みとどまりました。

しかし私は無意識の内に今来た電話番号を電話帳登録していました。この弱さが今後私をさらに苦しめることになります。

ウインカーを右に出し、そのまま車を走らせました。闇金の誘いから何とか逃れることができましたが、さらにお金がないことによる不安は大きくなっています。

会社に着くと真っ先に、佐々木さんの姿が目に入ります。佐々木さんは電話対応中でしたが、私に視線だけ送り一瞬だけ微笑んでくれました。その微笑が、いつまでも続く不安感を少しだけ和らげてくれます。

剣崎課長に報告を済ませ、報告書を作っていると、佐々木さんが近づいて来るのが目に入りました。

そしてコピー機に向かうフリをして、私の席を横切ります。

「おつかれさま」

あまり目立たない声で、そう言った後、ピンクの付箋が貼ってある缶コーヒーを誰にもわからないように机に置き、ほとんど止まらずに去っていきました。

ピンクの付箋には”おつかれさま”の後に「ハート」がついています。その丸味の帯びたハートに特別な意味を感じて気分が良くなってきました。

私はすぐさま携帯電話を開き、周りを気にしながらメールを打ちます。もちろん送信する相手は佐々木さんです。

「おつかれさま。缶コーヒーありがとう。食事なんだけど来週月曜日、会社終わった後どう?」

送信する時、とてもドキドキしました。パチンコ・パチスロと比べればとても真っ当な興奮です。

報告書を作っている間、様々な妄想が頭を駆け巡ります。以前、前かがみになった時にブラウスの隙間から見えたふくよかな胸の谷間と薄いスカイブルーのブラジャーも時折フラッシュバックしさらに私を刺激していました。

中々集中できずに時間がかかっている中、佐々木さんが退社していくのが見えます。出口を出る瞬間、振り向いて私を見て視線が合った時に声に出さず、口の動きだけで「じゃぁね」と言い、小さく手を振って帰っていきました。

そしてその5分後、携帯電話のバイブが震え、メールの着信を知らせるランプが点滅しました。

「出張、おつかれさま。今日はゆっくり休んで下さいな。来週月曜日、大丈夫です。」

私は携帯電話を閉じた後、さらに嬉しくなり妄想を加速させ、集中できなくなります。気がつくと社内には誰も残っていませんでした。

何とか作業を終わらせ、時計を見ると22時30分を示しています。

体には疲労感がありましたが、仕事を一段落させた充実感とと佐々木さんに対する期待感に包まれ満足しています。

闇金への恐怖や、パチスロで負けて現金が少なくなってしまった不安や、あらゆる違和感を吹き飛ばし私の自尊心を満たしてくれたのは、佐々木さんが醸し出す優しさと、情けないほどに単純な私の下心です。

本当の自分?

翌日会社を出た後、バイトの前の腹ごしらえにスーパーに立ち寄ります。半額の弁当を買った後、財布の中身は6千円になっていました。

今日バイトに行けば先週分のバイト代が入りますが、毎日減っていくお金を見て改めて不安感が増していきます。

今日仮に1万5千円入ったとしても、2万円くらいにしかなりません。来週の月曜に佐々木さんと行く食事を考えるとかなり不安になりました。

弁当を作ってくれたお礼という理由で誘っているので奢らなくてはいけませんし、ファミレスなどで安く済ますことも考えられませんでした。当然食事の後のことも考えると結構出費するでしょう。また翌日から給料日までの生活費も必要です。

バイトに行き、週払いの給料をもらうとすぐにそのお金を財布にしまいます。1万円札が財布に入ると少しだけ不安より安心が勝りました。

しかしいつもの通り、油や食品の腐敗臭は私の中にある元気を奪い、関口の存在は私のプライドを傷つけ、私は自分自身の現在の状況を叩きつけられるのです。

会社では新規の大口の顧客を獲得し、出来る男を演じ、会社の女性からは好意をもたれ、その女性を食事に誘えば一発でOKをもらうような「イイ男」ぶりを演じて自分に酔っていました。

しかし実際は、パチンコ・パチスロに支配され、消費者金融に多額の借金があり、支払いを滞納しガスを止められ、部屋を追い出されて車での生活を余儀なくされ、闇金に苦しめられているという、クズ人間です。

私はその事実を受け止めず、ひた隠し、事実を直視せずその場しのぎで生きています。

油や食品の腐敗臭や関口のイヤな態度は、そんな嘘で固めた自分を身ぐるみ剥がし、現在の自分をあらわにしました。

そんな事実が私を苦しめ、そして追い込み、自分が少しずつ壊れていくのを感じながらなんとか生きています。

私は出来る男ではなかったですし、充実もしていません。

パチンコ・パチスロに支配され、借金に苦しみ、せまい車の後部座席で眠る、ただもがいているだけの男でした。

バイトが終わった後、いつも通りに風呂に入り仮眠をとり翌朝会社に行くと佐々木さんの姿が見えませんでした。

「あれ?今日は遅番かな?」

気にしながらも営業に向かいます。そして会社に戻ってからも姿は見えませんでした。

私は心配になりメールをしようと思いましたが、ヤメにしました。

急に慣れなれしくするのがカッコ悪いと思ったからです。あくまでもクールな自分を演じる為に我慢しました。

明日は土曜日でその翌日は日曜日です。ということは約束している月曜日までは姿を見ることが出来ません。

そのことに違和感を感じます。佐々木さんの存在は今の自分にとって、不安や恐怖や影のある気持ちに光を与えてくれる唯一の存在だったのです。

それを感じることが出来ずにとても不安になりました。

佐々木さんにメールをしたかったのは、彼女のことが心配だったからではなく、自分の中にある違和感を何とかしたいだけです。

決して優しさではありません。私は自分のプライドと違和感をスッキリさせたいという気持でせめぎ合い、余計に自身を苦しめています。

土曜日のバイトを終え、風呂に入った後、睡眠をとり目が覚めた後、コンビニに向いました。

お茶とおにぎりを買いレジ横に積まれたフリーペーパーを手に取ります。

そのままコンビニの駐車場でおにぎりを頬張りながら、明日の食事をどこにしようかフリーペーパーをめくっていました。

「よし、ここにしよ」

選んだのはイタ飯屋で。値段は一人あたり2,680円。今の自分にとっては少し高いですが、高級すぎもなく、カジュアルすぎもなく無難です。

最初の食事には良い選択だと思いました。しかし食事だけで5千円以上かかるとなるとかなり財布の中身が心配になってきます。

もしかするとその後もあるかもしれません。というよりも当然それを期待します。と、なるとさらに5、6千円は考えないといけないのです。

改めて財布を見ると1万7千円入っています。しかしそれを考えると残りはまた1万円以下になってしまいます。

もちろんそれでも節約をすれば給料日まで何とかもつでしょう。しかし私はそのことに我慢できなくなりました。財布の中にお金が少ないことに納得できなくなります。

時計を見ると8時半。私の気持ちはすでに決まっていました。

すぐに車を走らせ、広い駐車場に車を停めると、日曜日ということもありすでに多くの人が列を作っています。

「勝ちゃぁいい。勝てばいいんだ。」

自分に言い聞かせるようにその列に歩みを進めます。

この時、私の体に渦巻いたのは、優しさでもなく、前かがみになった時に目に入ったふくよかな胸の谷間でもなく、スカイブルーのブラジャーでもなく、液晶のデジタルや銀色の小さな玉やコインやレバーのイメージでした。

 

65話終了です。

 

パチンコ依存症・パチスロ依存症になると精神的なストレスやお金の不安の解決方法が全てパチンコ・パチスロになってしまいます。当然ですが解決なんかできません。しかしそれ以外思いつかないのです。勝つことで安心しようとします。

この状態からはもう逃れる術はないでしょう。自分自身の求めている理想の自分とは真逆の方向に進み、気がついた時には後戻りが出来ない状況に追い込まれるのです。そしてさらに怖いのは気がついても真逆の方向に進むのを止められないことです。

私も地獄に向かってどんどん進んでいきました。

 

まだまだ続きます。

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