パチ依存症をこじらせて闇金から借金してた頃の話

パチ依存症をこじらせて闇金から借金してた頃の話-67

投稿日:2019年10月20日 更新日:

佐々木さんとの食事の約束の日に、わずかのお金しか残っていない私は約束をキャンセルしようと考えます。しかしいつもとは違う佐々木さんの指先のピンクのマニュキュアが、私の攻撃本能を刺激しました。そしてもう近づかないと決めていた場所に立っています。

※この物語は半分フィクションですが出てくるエピソードは実際に体験したことです。
いやほとんど実話です。
名前や団体名、組織名等は仮名になってます。
読んでいて気分を害したりする場合がありますのでその辺をご了承の上ご覧下さい。

正当な本能

その男が目の前に現れると全身の力が抜け、これから起こる苦しみを予感させました。そしてそれを受け入れるしかない自分に絶望感を覚えます。

「で、あべさん、いくらだ?」

「あ、あのう、3万円・・・貸してほしいのですが・・・」

「いいけど、どうやって返すんだ?」

「給料で返します」

「わかった、ちょっと待ってろ」

男がお金と借用書を用意するために、一旦席を立ち奥へと消えていきます。

”わかった、ちょっとまってろ”

この言葉を聞いた時に、不思議な安心感を感じます。これからおこる苦しみと安心感が体の中で渦巻きましたが、この2つは決して混ざることはなく、不規則なマーブル模様を作りました。

体の中に後悔している気持ちと「貸してくれて良かった」という2つの気持ちが存在し、普通の精神を保てなくなります。

それは、不思議な感覚です。

「じゃぁ、これ書いて」

「はい」

男が席に座り、何度もコピーされて文字が少し滲んだ借用書を目の前に置き、そう言いました。

そしてその横には私が借りる3万円。

当然ですがその3万円は、私のものではありません。10日後までに5割の利息をつけて返さなければいけないお金です。しかし私の頭の中ではそんなことも考えることが出来ずに、早くそのお金を財布の中に入れ、この場を立ち去りたい気持ちでいっぱいになります。

「書きました・・・」

闇金はそのお金が回収できると踏めばすぐに貸してくれます。あえて闇金側に立てば貸さなければ商売になりません。

そのことで借りた側がどのような状況に陥ろうと関係ないのです。

安易に手にするお金にはリスクがピッタリと張り付いています。それは剥がすことは不可能です。

そして闇金の思惑と借りる側の思惑とリスクはこの瞬間、不思議な相互作用を生み出します。

闇金は法外な利息を得られる思惑。

借りる側は喉から手が出るほどお金を手にしたい思惑。

しかし、その後にプラスになるのは闇金側で、借りる側は搾取されるだけです。

「じゃぁ、10日後。返済日の前日は必ず連絡よこせ」

「はい・・・」

私は、受け取った3万円を財布には入れずにスーツのポケットに折りたたんで入れ、足早に事務所を出ました。

薄暗い、雑居ビルの階段を下りながら改めてポケットから3万円を財布に入れる時、少しずつ体の中に渦巻いていたマーブル模様の苦しみの部分が消えていき、安心感だけが体に残ります。

でもそれは消えたのではありません。

安心感の塊の中心に隠れるように影を潜めただけ。

その苦しみは数日後に安心感を飲み込み、私の体全てを苦しみと恐怖一色で染める為にじっとその時を待っているのです。

車に乗り、落ち着く為にコンビニの駐車場に車を止めます。

お茶を買い、グイッと一気に飲み干しました。

とりあえずこれで佐々木さんとの食事の約束は果たせます。私はそのことに安心し、すっと胸を撫で下しました。

そしてフリーペーパーで目星をつけていたイタ飯屋に連絡をし予約をとります。

予約を取った後、すぐに佐々木さんにメールを入れました。

「おつかれさま。今日のご飯19時に予約いれてるけど大丈夫?」

「おつかれさま。もちろん大丈夫ですよ。どうすればいいですか?」

「じゃあ、18時30分にターミナル駅で待ってて。迎えにいくよ」

「わかりました。待ってますね」

メールを終え、携帯電話を閉じた後から、先ほどとはまるで違う感情が私の体を支配しました。

それは、パチンコ・パチスロで負けて悔しさに取り付かれる感情でもなく、闇金に恐れおののき、恐怖に支配されて、ただ恐怖と苦しさを受け入れるだけの感情ではありません。

その感情は幼少の頃、川の激しい流れに流されないよう耐えながら、竿を投げ、長い時間糸をたらし、じっと耐えた末、ニジマスが針に食いついた瞬間の感覚に似ていました。

それは男が持っている、正当な攻撃本能が震えた時だけに、起きる感情なのでしょう。

そしてその感情は、竿に伝わる命の抵抗に打ち勝ち、キラキラと光る体を水面から釣り上げ、そしてそれを体に取り込んだ時、その感覚はさらに力強い感情に昇華します。

きっと佐々木さんの体は、キラキラと光るニジマスの体より綺麗で、その内側に持つ優しさの象徴を取り込むことで得るその感情は、ニジマスを釣り上げその背中にかぶりつき体に取り込んだときより、もっと力強い感情になるはずです。

そして、指先に塗られたピンクのマニキュアより綺麗な体の一部は、さらに本能を震わせてくれて、私の中に住みつく全ての恐怖と苦しみを吹き飛ばすでしょう。

コンビニから営業先に向かうために車を走らせます。

私は今日の夜に起こるであろうことを想像し、期待に胸躍らせて興奮していました。

しかし、私は気付いていません。

私の中に住みついている、恐怖や苦しみの根源は、私のちっぽけな攻撃本能では太刀打ちできないほど育っていたのです。

母性と強さ

営業を終わらせ会社に戻り事務所のドアを開けた時に、先に上がった佐々木さんとすれ違います。

「お先にしつれいしまーす」

私の顔をチラッと見て、他の人にする表情と変らない顔で挨拶して横を通りすぎていきました。

それはこれからのことを押し殺して、無理に作った表情の気がしました。秘密めいた雰囲気が私の興奮をさらに加速させます。

私は直ぐに席に着き、急いで終了業務に取り掛かりました。そしていつもより早く終わらせると、すぐにタイムカードを押し会社を後にします。

ビルを出た後、駆け足で待ち合わせ場所に向いました。駅が見えてくると少し息が切れてきましたが、速度は落ちることなく、むしろ加速していきます。

佐々木さんは入り口から少し離れた、何を表しているのか私には理解ができないコンクリートのオブジェの前に立っていました。

いつもと少し雰囲気が違うワンピースとジャケットは、柔らかな印象をさらに増幅させます。

「おまたせ」

「あ、意外と早かったですね、おつかれさま」

「おつかれさま。おなか空いたでしょ?」

「空きました笑。」

「笑」

10分程歩き店に到着し入り口に入ると、すぐに席へ案内されます。ジャケットを脱いだノースリーブのワンピースから見える白い肌が、高揚している私の気分をさらに盛り上げました。

「そういえば、先週の土曜日いなかったから、どうしたのかなと?」

「あ、うん。チビが熱出しちゃって・・・病院も連れて行かなきゃいけないから休んじゃった」

「マジで。で、もう大丈夫なの?今日来て大丈夫だった?」

「あ、うん。まだ完全じゃないけど大丈夫だと思う」

「いやっ、もしあれだったら今日も・・・」

「うん。ばぁやが見てくれているから大丈夫よ」

「そ、そう・・・」

なんだか、申し訳ない気持ちになりましたが、しょうがありません。一人にさせているわけではないので大丈夫だろうと思い込みました。

食事が運ばれてくると、そんなことは忘れて話をしました。思った以上に会話は弾みます。

食事が終わった後も、会話が途切れることはありません。正直いうと最初は緊張感もありましたが、今は”ほぼ”純粋に会話を楽しんでいます。

なんだか久しぶりの感覚に嬉しくなりました。「誰かと食事をしながら会話を楽しむ」こんなたわいもない感覚が久しぶりだったのです。

おそらくミィと距離を置いてからは、なかったような気がしました。

「じゃあこの後はカラオケでも行こうよ」

「うん、そうね」

店を出ると空気はひんやりしていましたが、少し火照った体をクールダウンして心地よく感じます。

カラオケに着くと少しだけ先ほどとは違う雰囲気を佐々木さんに感じます。おそらくそれは先ほどより薄暗くなった照明のせいでしょう。

佐々木さんは会話をせずに、次々と曲をいれていきます。

5,6人程座れるその椅子に少しだけ離れて座るその距離がもどかしく感じ、私は少しずつ距離を詰めていきました。

1時間ほど経つと、ほぼノンストップでカラオケが鳴り響いていた空間に静粛が訪れます。

その静かな時間が5分程流れた後、佐々木さんは曲を入れました。

「私、この曲好きなんだ・・・」

イントロが流れ、そう言うと一瞬寂しそうな表情を見せ、別れのラブソングを歌い始めます。

その日、佐々木さんが悲しい表情を見せたのは唯一その時だけでした。

曲が終わると、また静かな時が流れます。私は先ほどまでの気持とは違い、落ち着かなくなっていました。

「そろそろ出ようか・・・?」

「うん・・・」

店を出てネオンの光の間を歩きます。

「じゃあ、少し車で走ろう。会社の営業車だけど・・・」

「いいわよ。会社の営業車乗るの初めて笑、ふふっ、深夜のドライブね」

20分ほど車を走らせ、造園所の駐車場に車を入れれました。夜景が見える場所にはすでに4台ほどの車が停まっています。

私はそこから一番遠くの場所の、夜景や街灯の光が届かない場所に車を停めると、すぐに佐々木さんの手を握り体を引き寄せます。体が密着し胸の感触を感じると甘く爽やかな香りがしました。

顔が近づいた時、佐々木さんは、少しだけ顎を引き下を向いてわずかな抵抗をしましたが、唇を合わせた瞬間からすぐに力が抜け、私の攻撃本能を受け入れます。

きっともうすぐ、キラキラとしたニジマスのように水面から水しぶきをあげ、その体は私に取り込まれるでしょう。

絡ませる舌が強くなり、佐々木さんの息遣いが荒くなってきた時、私は一度体を離します。

そしてすぐに車を走らせようとしました。

「ねぇ、あべさん・・・」

「ん?」

「ちょっと、ばぁやに電話していいかな・・・」

少し、嫌な予感がしました。

「ごめんなさい。何度も電話鳴ってるのよ・・・。おそらく実家だと思う」

佐々木さんはすぐにバッグのチャックを開けます。そして携帯電話を取り出した瞬間に激しくバイブしました。すぐに携帯電話を開き電話に出ます。

「うん。・・・。うん。・・・。今、熱は何℃なの?・・・。わかったわ。」

電話を切った後、バッグにしまいながら申し訳なさそうな表情をします。そしてそれまでの表情とは違い、力強い、母親の表情をしました。

恍惚の女性の表情ではなく、守るべきものを包み込む母の表情・・・。

私はたじろぎ、圧倒される気がしました。

「ごめんなさい。チビがまた熱上がって・・・・」

「ま、まじ・・・。じ、じゃ、すぐ帰らなきゃ」

「・・・うん。ホント、ほんと、ごめんなさい・・・・」

「あ、いや、いいよ。大丈夫。気にしないで。送っていくよ・・・」

佐々木さんを送り、家に向かって駆けていくそのうしろ姿を見た時、その背中から感じた力強さは男だけがもつ攻撃本能すらかなわない、全てを包み込む大きさと強さを感じます。

私はこの日、キラキラとした体を水面から釣り上げ、ピンクのマニキュアより綺麗な体の一部を取り込むことは出来ませんでした。

いつもの通り、公園の駐車場に車を停めます。夜になると冷えてきたため、トランクからタオルケットを出し後部座席でそれに包まり横になります。

わずかに残る、佐々木さんの甘く爽やかな残り香を嗅ぎ、唇や舌や乳房の感触を思い出しながら眠りに入ると、気分は悪くありませんでした。

それはきっとこの次に会う時のことが予感できるからです。今日はアクシデントで上手く行きませんでしたが、次は必ず想像している通りになるでしょう。

先ほど感じた感触は私に余裕と安心感を与えました。

しかし私は気付いていません。

私の中に潜む苦しみや恐怖は、すぐに渦巻き、やがてマーブル模様になり、そしてすぐに私の安心感や正当な攻撃本能と全てを覆い尽くすのです。

それは母性すら飲み込むほど強力な悪魔でした。

 

67話終了です。

 

パチンコ・パチスロ依存症になると、お金が手元にないことがとても不安になることが多くなります。その違和感に勝てないのです。

その違和感は、借金の苦しさや闇金の恐怖より大きな違和感と錯覚させてしまいます。

その違和感を掻き消そうと錯覚し、さらに大きな違和感へとつながるのです。

やはりというか、またというか、改めて闇金に手を出しました。そこに私が求める安心感は存在しません。そこにあるのはさらなる地獄です。

 

まだまだ続きます。

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