パチ依存症をこじらせて闇金から借金してた頃の話

パチ依存症をこじらせて闇金から借金してた頃の話-77

投稿日:2019年12月30日 更新日:

天井越え、ノーボーナス・・・。最悪の負けで残金をほぼ0円にしてしまいます。車でのホームレス生活の中、刻々と迫る冬の季節への危機感が、さらに絶望の渦に自分を追い込んでいきました。

※この物語は半分フィクションですが出てくるエピソードは実際に体験したことです。
いやほとんど実話です。
名前や団体名、組織名等は仮名になってます。
読んでいて気分を害したりする場合がありますのでその辺をご了承の上ご覧下さい。

後戻り

朝、公園の駐車場に停まった車の後部座席で目が覚めます。朝日は差し込んでいますが、空気はひんやりとしているのを感じました。

すぐに水のみ場へ行き顔を洗うと、水の冷たさが不安を増幅させます。

「まじで、住む場所どうにかしないとやばいな・・・」

朝のジョギングをしている人も、徐々にTシャツから長袖やウインドブレーカーを着ている人が増えてきました。

後、二ヶ月もすれば初雪が降り、辺り一面を真っ白に染めるでしょう。

「おはようございます」

会社に着きタイムカードを押して自分の席に向かう途中、自然と佐々木さんを目で追っている自分に気付きました。

見ると、複数の男性社員と楽しそうに話しているのが見えます。話している内容までは耳に届いていませんが、話している男性社員は嬉しそうです。

佐々木さんのことを多くの男性社員は好意的な目で見ています。それは、佐々木さんが子持ちでバツ1ということを差し引いても、明るく優しい雰囲気や癒しを与えるような雰囲気と、大きな胸と細く綺麗な足とのギャップに惹きつけられていたからでしょう。

話が盛り上がり、佐々木さんが笑いながら何の気なしに肩を叩かれた男性は、目尻を下げ満足そうな顔をしています。

そんな風景を見て不思議と嫉妬のような気持ちは沸いてきません。

どんなに他の男性社員が佐々木さんと楽しそうに話すことができても、制服の下の体を想像しても、会社にいる全ての人は、タイトスカートから伸びる黒のスットッキングの下にある太ももに隠された”ネコのタトゥー”を想像することができないでしょう。

それを知っているのは、この中でも自分だけだという優越感が、私を満足させました。

午前中の営業を終え、車の中で一息つきます。

お腹が空いていました。優越感ではお腹は満たせません。

途端に危機感と空しさでいっぱいになります。

だんだんとそのことに苛立ち、我慢が出来なくなってきました。

明日の夜には先週分のバイト代が入ります。しかしそれまで耐えられる気がしません。

気がつくと、携帯電話を開きダイヤルを押していました。

「はい、希望ファイナンスです」

「あ、あのう・・・あべまさたかと申しますが、お金を貸してほしいのですが・・・」

「あべさんですね、少々お待ち下さい」

いつもの通り、雑音のまじった保留音が流れ、待たされます。この時、私の中で今までとは違う変化が起こっていました。

これまでは、闇金にお金を借りることに”抵抗”を感じていました。

それは、高い金利だったり、支払えないことに対する恐怖だったり、生活が困窮する苦しさを想像してのことです。

特に恐怖はかなり大きなものでした。

最近は少しずつ闇金が社会問題化しており違法な取立てや、それに伴う債務者の自殺などがニュースに取り上げられることも増えています。

もちろんニュースを見なくても、私は肌でその恐怖を感じていたのでした。

私は始めて闇金に手を出した時に、支払いが出来なくなり、その一端を感じてからはとりあえず支払いは出来ているので、違法な取立てはされていませんが、常にその恐怖は闇金からお金を借りることに対して、いつも躊躇の気持ちがあったのです。

それが少しずつ薄れ、ほとんど抵抗を感じなくなっていました。

「あべさん。どうした?」

「あ、あのう・・・。また借りたいのですが」

「いいよ。いくら?」

「3万円なのですが・・・」

「わかった。何時に来る?」

「近くにいるので、15分くらいで行けます」

私は、もう後戻りできない道へ自ら足を踏み入れています。

曖昧と淫靡

闇金の事務所のある雑居ビルの階段を上がる時も、ドアを開ける時も以前のような恐怖や躊躇の気持ちは沸きません。

「あべさん、どうした?完済したばかりだし給料出たばかりだろ?」

「あ、はい。すいません。ちょっと出張やクレーム処理で入用が急に出来て・・・」

「そうか、大変だな。で、返すあてはあるのか?」

「あ、はい。出張の清算があったり、バイトの週払いの給料があったりするので大丈夫です」

「バイト?バイト始めたのか?」

「あ、はい。深夜の清掃関係です」

「そうか。大変だな」

「はい・・・」

以前は、低く太い闇金の男の声に私の中にある恐怖感は膨らんでいきましたが、それを感じなくなっていました。

お金を借りる時にウソをつくのは慣れていたので、今まで通りでしたが、恐怖感や抵抗感がほとんど湧きません。

「ハンコ持ってきてるか?」

「あ、いや、すいません。持ってきてません」

「じゃ、拇印でいいや」

それは借用書を書いている時も、拇印を押すため人差し指を朱肉に乗せる時も湧かなくなっています。

前までは、雑居ビルの階段を上がる時や、ドアを開ける時からワナワナと騒ぎ出した恐怖感が騒がなくなっていたのです。

闇金で借金をして、苦しみながらも返済してきました。

初回を除けば、まともに返済していたので闇金側から何かをされたことはありません。

そう考えると高い金利を無視すれば、他から借金できない私にとってはお金を借りるための単なる金融会社です。

なんども闇金に借金をした私は、この状況を「錯覚」してしまいました。

借りても返済できると思っていましたし、闇金を利用するのが”普通”に感じてくるようになっていたのです。

良くも悪くも「抑止力」になっていた恐怖感を感じなくなっていました。

「返済は10日後、前の日に電話忘れるなよ」

「はい」

受け取った3万円を、スーツのポケットにしまい雑居ビルの階段を降ります。この時も今までのように、後悔やこの先の苦しさや恐怖感は沸いてきません。

少しだけ、曖昧な感情になりその違和感を不快に思いましたが、それよりも財布の中にお金が入っている安心感に包まれていました。

車に乗り込みすぐにコンビニに向かいます。

少し時間が遅かったのもあり、弁当類はほぼ売り切れていたので、しょうがなくサンドイッチと菓子パンを手に取りました。ついでにお茶とレジ横にあるフランクフルトも購入します。

「684円です」

財布の中から闇金から借りてきたばかりの1万円札を渡します。いつもなら普通の弁当や牛丼を食べた方が少し安いことに後悔しますが、何も思いませんでした。

店を出る前に、雑誌が並べてある場所に立ち寄り、パチンコ雑誌、パチスロ雑誌を手にとりパラパラとめくります。

もうすでに、昨日負けた悔しさや後悔、「もうパチンコ・パチスロをやめよう」と思ったことは、頭にありませんでした。

その日の営業が終わり、会社に戻ると佐々木さんに呼び止められます。

「あ、あべさん」

「は、はい」

「剣崎課長に言われて、例のカレン製薬の件で書類作ってるんですけど・・・」

お互い、秘密を共有しているような緊張感が心地よく感じました。

「それで、以前のプランとか今回かかった経費とか、あべさんに見てもらいながら一緒に作りたいんです」

「あ、うん。わかった。で、いつ?早めの方がいいよね?」

「はい、今日とかこの後、ダメですか?」

「きょ、今日!?だ、大丈夫だよ・・・」

正直、昼にコンビニに行った時からパチンコ・パチスロを打とうと思っていました。それが思ってもいなかった横ヤリが入ります。

しかし、気分は悪くありませんでした。今日、書類を作るとなると一緒に残業になるでしょう。もしかするとその後の展開もあるかもしれないと思ったからです。

「じゃぁお願いします。終了業務終わったら呼んで下さい。私もやらなきゃいけない仕事終わらせておきますので」

「あ、何かゴメンね。オレの顧客のせいで残業になって・・・」

「全然、気にしないで大丈夫ですよ。」

そう、言いながら席に戻っていく佐々木さんの後姿を見ながら、私の中にある淫靡な想像は膨らんでいきます。

優越感を満足させ、偽物の自尊心を満たすために十分な想像です。

そしてそれは、私の中にある、危機感や恐怖感、苦しみ。そこから逃れるための意志を、さらに曖昧に包み込んでいきました。

 

77話終了です。

 

私は闇金に何度もお金を借りて、何度も返済してきました。そのため闇金に対する恐怖や借りてはいけないとい抑止が無くなっていき、それが当たり前のようになっています。

もちろん、恐怖心は残っているのですが、運良く?返済できてしまっていたため、恐怖がだんだんと想像できなくなり、闇金からの借金に抵抗がなくなっていったのです。

しかし、闇金が変わったのではありません。変わったのは自分の想像力です。

時に想像力は「恐怖」や「苦しみ」を生みますが、違う想像力は今ある「危機」を曖昧にします。

恐怖や苦しみは、少しずつ私に襲い掛かる牙を休めているだけでした。

それを味わうのはもうすぐです。

 

まだまだ続きます。

78話↓

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