彼女から借りた30,000円をパチスロで10,000円に減らしてしまいました。
闇金の返済日まで残り四日。
この四日間で75,000円を用意しなければいけません。
普通で考えればこの状況ですでに詰んでいますが、どのようにしていくのでしょうか・・・。
※この物語は半分フィクションですが出てくるエピソードは実際に体験したことです。
いやほとんど実話です。
名前や団体名、組織名等は仮名になってます。
読んでいて気分を害したりする場合がありますのでその辺をご了承の上ご覧下さい。
前触れ
眠い目をこすりながら仕事へ向かいます。
ただ朝からパチスロのことばかりを考えていました。
「軍資金1万円で一番勝てる台は・・・?」
「まずは羽根物で軍資金を増やしてからスロットで勝負」
「いや残り四日しかない。打てる台があればいきなりスロットで勝負した方がいいかも」
色々考えますがここでパチンコ・パチスロをせずに今後の事を対処しようとはひとつも考えません。
パチンコ・パチスロ依存症になると「パチンコ・パチスロ」を打たないという選択肢は自分の中にはないのです。
そんな中、職場に到着。
すぐに営業先へ向かう用意をします。
「今日は○○市ばかりなので、多分そこから直帰すると思います。」
あえて隣の市ばかりの営業先をルートで組み、その営業予定を提出し会社を後にしました。
少しでも早くパチンコ・パチスロ打ちたい。
そのため一度会社に戻り仕事をしてから退社するとそれだけ遅くなりパチンコ・パチスロを打つ時間が少なくなってしまいます。
直帰にしたほうが都合がいいのです。
営業先に向かう道中もパチンコ・パチスロのことばかり考えていました。
というよりも一刻も早く打ちたいのです。
そのため営業先でも大した説明をせず顔を出すだけという感じで淡々と進んでいきます。
予定していた営業先を12時前には半分以上、回り終えてしまいます。
いつもならコンビニに寄って「弁当とお茶」を買うところですができるだけ軍資金に回したいので昼ご飯を食べるのを我慢します。
とりあえず空腹を紛らわせるためパチンコ・パチスロの雑誌を立ち読みし数値や立ち回り方などを改めて頭の中に叩き込むとなぜか勝った気分になれて少し落ち着きました。
当たり前ですが雑誌を読んでも勝てるわけではありません。
13時になり営業を再開です。
ただ午前中と同じく営業というよりは少し顔を出すだけ。
16時前には今日の予定を全て終えてしまいました。
ここで私の頭の中は一択です。
「パチンコ・パチスロを打とう」
「18時くらいになったら直帰の電話をすれば大丈夫」
そして市の外れにあるパチンコ屋の駐車場に車を止めます。
見えない気持ち
そのパチンコ屋は以前にも一度打ったことがあるホールです。
大手のチェーン店ではなく規模もそれほど大きくはありませんが、客つきはまあまあでした。
時間が早かったこともあり半分ぐらいの台がパチンコ・パチスロともに埋まっている感じです。
店内をぐるっと一周します。
台のラインナップは以前来たときとほとんど変わりありませんでした。
スロットは特にこれといって打てそうな台がなく軍資金も考えとりあえず羽根物の島に行きます。
「とりあえず羽根モノで増やすか」
そして現金投入。
またもや絶対に負けられない勝負がスタートです。
役物が開いても少し拾ってくれない気もしますが、チャッカーにはよく入りまあまあな気がします。
そして投資2,500円目 見事Vゲットです 。
ラウンドは15R
「よし幸先のいいスタート!」
しばらく打ち続けているとチャッカーにはよく入るのですが、いかんせん寄り釘が悪くなかなか拾わないため出玉は思うように増えません。
気が付くと18時を回っています。
「今終わりました。このまま直帰します」
会社に業務連絡の電話をして改めてホールに戻ります。
出玉は2,000発ほどありますがこのまま続けていても増えることはないと考え一旦交換することにしました。
すぐに換金をして手元に残っているのは15,000円。
「今日は調子悪くない。スロットで勝負」
毎回のことですが何も根拠はありません。
そしてスロットの島に向かいキングパルサーに着席します。
ゲーム数は271ゲーム 。
履歴を見てみるとその前のゲームで860ゲームハマっていました。
「ストックありそうだな」
ただそれだけです。
はっきり言って期待値も何もありません。
今ある軍資金では天井に行く前に資金が尽きてしまうということも考えられるのです。
「調子がいい」ただそれだけで勝てると思ってしまいます。
もっと言えばただ打ちたいだけです。
「調子がいい」というなんの根拠もない理由も今目の前にあるパチスロを打つための言い訳でしかないのです。
サンドに現金を投入します。
300ゲーム
・
・
400ゲーム
・
・
512ゲーム
ボーナスが来る気配がありません・・・。
残金は7,000円
「大丈夫来るっ続行!」
改めてですが何も根拠はありません。
1,000円
・
・
2,000円
・
・
3,000円
だんだん気持ちが焦ってきます。
レバーを叩くのもストップボタン押す指もだんだん強くなってきます。
5,000円
・
・
6,000円
・
そして最後の1,000円です。
・
・
・
・
何も起きませんでした。
終了です。
とぼとぼとパチンコ屋を出て駐車場の間を歩き車に乗り込みここで初めて我に帰ります。
「給料日までお金ない・・・ご飯どうしよう」
「闇金の支払いどうしよう・・・」
「もうだめだ終わった・・・」
脱力感が全身を覆います。
「本当にもうパチンコやめよう・・・」
これまで何回もそう思ったことがまた頭の中に駆け巡りました。
もう全てにおいてやる気が出ません。
生きる気力が全てなくなった感じです。
家に着きとりあえずはお米とふりかけがあるのでそれだけでお腹を満たす事にします。
「さすがにあいつも昨日の今日じゃお金貸してくれないだろうな・・・」
気力が出ない自分はこの時点で全て諦めてしまいます。
闇金への恐怖感はありましたが何もやる気が起きないのです。
支払日まで
残り三日
・
・
二日
・
・
前日
その日営業を回っていると闇金から電話がかかってきました。
「明日支払日だけど大丈夫だよね?何時に来るの?」
「12時頃には行きます」
「わかった。じゃあ待ってます」
明日は仕事は休みですが、もちろん支払いするお金はありません。
恐怖感から嘘をついてしまいました。
相手の声を聞き恐怖感と緊張感が全身を駆け巡りました。
「ヤバいなんとかしないと・・・」
それまでの無気力が嘘のように何とかしようと、お金を貸してくれそうな知人に電話をしますがこんな時に限って全て断られてしまいます。
「終わった本当に終わった。もういいや・・・」
早めに布団に入り電気を消すとメールの着信音が鳴ります。
「今、部屋付いた~疲れた」
「お疲れ様」
「明日休みでしょ?何するの?」
「特に決めてないけど・・・」
「そっかぁ。仕事帰り寄りたいけど忙しいから日曜日にする」
「わかったよ。無理するなよな」
「うん、ありがとう。ほんじゃそろそろ化粧落として寝るね」
「おう、おやすみ」
「おやすみなさい」
こんな時、不思議と彼女には優しい気持ちになれました。
俺はなぜいつもこんな気持ちになれなかったんだろう・・・。
そして支払日の当日の朝。
手元にお金はありません。
どう転んでも支払いすることはできないのです。
色々想像して恐怖が全身を駆け巡りました。
「これ、どうなっちゃうんだろう?」
「どっかさらわれてなんかされちゃうのかな?」
「マグロ漁船とか乗らなきゃいけないんだろうか?」
「腎臓とか売らなきゃいけないのかな?」
一瞬どうにかしようと考えますが、どうにもできないことを悟りすぐに脱力感を覚えます。
そんな時彼女のことが頭の中を駆け巡りました。
彼女はいつも明るくそして優しくそして強く。
自分がどんな時もそばで笑ってくれていました。
彼女は色々なものを与えてくれました。
自分はきっと何も与えていません。
俺は彼女に何を与えてあげられるんだろう・・・
「できるだけのことはやろう」
何も解決するかどうか分かりませんがとりあえず闇金に電話します。
「はい地獄金融です」
「あ、あのすいません、あべと申します」
「あぁ、あべさん、どうしたのまだ来ないの」
「あ、あの実はお金なくて・・」
「あぁん?で、どうすんだ」
「い、いやあのっ、3日待ってください絶対に何とかします」
「どうやってだ」
「いや、友人から借りますしなんか日雇いのバイトも探し・・」
「とりあえず事務所こいや」
そういうと電話を切られました。
「行くか・・・」
雑居ビルの階段を上る時、これから始まる地獄のような風景をこの時少しも想像できていませんでした。
以上8話でした。
全てをあきらめた時に彼女の優しさや私に対しての気持ちに気付き「できるだけの事はやろう」と考えました。
見栄やプライドが全て無くなった時に初めて向き合う事ができるんですよね。
もちろん彼女がきっかけを与えてくれてます。
しかしこの時は全然そこに気付けませんでした。
次回は地獄パートです。
続きます。
9話↓
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