パチ依存症をこじらせて闇金から借金してた頃の話

パチ依存症をこじらせて闇金から借金してた頃の話-81

投稿日:2020年1月26日 更新日:

ノーボーナスでフィニッシュ。財布にはお金がなくなっていました。空腹を感じると同時に私の体の中に”不安”が渦巻きます。その不安から逃れるために携帯電話を開き繋いだ先は、もっと不安が渦巻く闇金でした。

※この物語は半分フィクションですが出てくるエピソードは実際に体験したことです。
いやほとんど実話です。
名前や団体名、組織名等は仮名になってます。
読んでいて気分を害したりする場合がありますのでその辺をご了承の上ご覧下さい。

カモ

無意識のダイヤルでした。

「あの・・・、あべと申します。また、お金貸してほしいのですが・・・」

「あべさん?フルネームは?」

「あ、あべまさたかです」

「ちょっと、お待ち下さい」

保留音がなり、待たされます。いつもは不安を倍増させるノイズ交じりの保留音も、あまり不快に感じなくなってきました。

保留音が切れ、いつもの男の声がします。

「あ、あべさんどうした?」

「あの、またお金を貸してほしいのですが」

「いいよ。いくら?」

「3万円です」

「わかった。何時にくるんだ?」

「あ、15分くらいで行きます・・・」

「わかった」

もう、闇金の男もあまり借金する理由などを詳しく聞いてこなくなりました。

とりあえずまともに返済する私は、闇金にとっていい”カモ”です。

闇金が私に余計な詮索をしなくなったのは、私のことを信用しているのではなく、すでに元金の何倍もの利息を支払っていたからでしょう。

これは私の想像ですが、仮に私が逃げ出し回収できなかったとしても、損はしないのです。このまま逃げないのであれば、貸し続ければ私から絞り続けることができます。

私は闇金にとって格好の餌食になりました。

車を闇金の入っている雑居ビルから少し離れた位置に路上駐車します。駐禁が気になった時、少しだけ”不安”が体を駆け巡りました。

しかし、それよりも財布にお金が無い”不安”をどうにかしたいという気持ちが上回り、その不安を掻き消しました。

冷たい風を感じながら雑居ビルの重いドアを開くと、私は少し興奮を覚えます。このビルを出る頃には、財布の中に3万円が入っているのを想像しながら闇金の事務所に向かいました。

不思議な感覚です。今までのように闇金の事務所に入るビルに入っても、事務所のドアを開く時も、以前のような不安感が沸いてきません。

これは、私のメンタルが強くなったわけでも、闇金に対して慣れが出たわけでもなく、ただ単に「麻痺」していたからでしょう。

当然、私はそんなことに気づきませんでした。

いつものように借用書を書き、拇印を押した後、3万円を受け取ります。

席を立って事務所を出ようとした時に、男がいつもの低い声で私にこう告げます。

「なんかあったら、また来いよ」

「は、はい・・・」

この一言を私は勘違いして捉えてしまいます。

私は、”また来いよ”の言葉を「まだお金を借りられる」と捉えました。もし、この後お金がピンチになってもまだ借りられると解釈していたのです。

当然、借りれば苦しみは大きくなります。しかし私は借りた後の苦しみを想像できませんでした。

何度も何度も苦しんでいるはずの借金も、その苦しみを思い出すことができなくなっています。

それよりも、お金がなくなってもここに来ればどうにかなるという、間違った認識が私の中に生まれたのです。

私はパチンコ・パチスロだけではなく、「闇金」にも依存し始めていることに気づきませんでした。

お金が無いという不安や、空腹という不安を掻き消し、安心を得るためには、ここを頼るしかなかったのです。

雑記ビルを出ると、急に不安になりました。

しかしこれは、闇金に借金をしてしまった不安ではありません。路肩に停めていた車の駐禁が気になったのです。

コートの衿を立てながら歩くスーツ姿のサラリーマンや、財布を抱えて寒そうにコンビニに向かうOLの間を交わしながら小走りで車に戻ります。

駐禁は大丈夫です。

ドアを閉め、エンジンを掛けると先ほどまでの不快感が無くなり、安心感が全身を包みました。

この時、私の頭の中にはすぐに訪れる闇金の返済の苦しみはありません。

考えたのはこの後、何で空腹を満たそうかということだけでした。

フレーバー

牛丼大盛り、味噌汁、ごぼうサラダで空腹を満たした私は、すぐに営業先に向かいました。朝までの脱力感が嘘のように、集中しています。

特に契約に結びつきそうな会社はありませんでしたが、気分は悪くありませんでした。

午後の営業を終えると、あたりは暗くなってきています。日が短くなってきていることを感じると同時に、じきに来る冬の季節に一抹の不安をすこし感じていました。

会社に戻り、終了業務と翌日に向けて資料を整理します。そろそろ結果につながる何かがないといけません。

一瞬、パチンコ・パチスロのことが頭をよぎりますが、このまま結果を出さずに「デキる男」を演じることができなくなる自分を想像すると、自然と目の前の仕事に集中していました。

訪問先のリストを見ながら、頭を悩ませていると後ろに人が通り過ぎるのを感じたと同時に、缶コーヒーがポンと机に置かれます。

すぐに振り返ると、佐々木さんがこちらを見ずに自分の席に戻っていくのが見えました。

缶コーヒーには、いつものようにピンクの付箋が貼られています。一瞬、ドキリとしあたりを見渡して誰にも見られていないか確認しました。おそらく、誰にも見られていないはずです。

ピンクの付箋を剥がし、プルタブを引いて一気に喉に缶コーヒーを流し込みます。

”おつかれさま。今日は私も残業よ。”

そう書いてある付箋を開いている手帳に貼り付け、すぐに閉じました。

おそらくこの時、私の顔はオフィスの誰よりもニヤけていたでしょう。

こんな時の男は滑稽なほど単純です。

佐々木さんからの好意を胸にさらに気合が入りました。

トイレに行こうと一息ついた時、21時を回っていることに気づきます。オフィスの一部は電気が消され、会社にはほとんど人が残っていない様子でした。

そんな中、佐々木さんの方を見るとまだパソコンのキーボードを叩いています。

「まじか、佐々木さんまだいたんだ・・・」

私は何気なく佐々木さんに近寄り、小声で声をかけます。

「まだ、終わらないの?」

「あ、びっくりした。おつかれさま」

「うん。まだかかる?送っていくよ」

「うそっ。ありがとう。あと10分くらいで終わる」

「OK!じゃぁ先に出るから、駅でまってるね」

正直まだまだ、仕事は残っていましたが、急いで散らばった資料を片付けてタイムカードを押しました。

車に乗り込みエンジンを掛けると、布袋のギターが大きくうねりを上げてスピーカーから響いてきました。私は急いでダッシュボード開け、「Mr.Children」にCDを変えて駅に向かいます。

駅に着き、車の中が少し温まった時に、佐々木さんが見えました。

「ふぅ、疲れた!」

「おつかれさま笑」

「珍しいね。こんなに遅くまで残業なの」

「うん」

「どこか寄ってご飯たべていかない?」

「・・・。ごめんなさい。今日はまっすぐ帰るわ」

「・・・あ、うん。わかった」

何気ないフリをしていましたが、内心は少しショックでした。大きな乳房も、吸い付くような湿った肌も今日はおあずけです。

「一昨日も、遅かったしチビのこともあるから・・・」

「あ、う、うん。ぜんぜん。全然」

と、紳士的な対応をしましたが、内心はとてもがっかりしています。血気盛んな私の欲望は完全に行き場を失ってしまいました。

いつもより会話の少ない少し重たい空気の車中、佐々木さんが口を開きます。

「あべさん、ガム食べる?」

「うん。食べる」

カバンの中から板ガムを取り出し包み紙を剥がし、端っこだけ口にくわえました。そして信号待ちの時にガムをくわえた唇を私の唇に近づけてきます。

「ふぅぁい。ろぉうぞ」

そういいながらガムの端っこを私の唇にあて、ガムを口移しのように渡してきます。

佐々木さんの、その甘くくすぐるような行動に私は一瞬にして気分が高揚しました。

こんな時の男は気恥ずかしくなるほど単純です。

信号が青になってから、先ほどまでの雰囲気がウソのように私は饒舌になっていました。

「私は、こっちのガム食べよーッと」

街灯の明かりに照らされて少しだけ見える、微笑んだ顔が私の淀んだ気分をクリアーにし、幸せな気持ちに満たしてくれます。

佐々木さんの自宅が近づくにつれ「このまま、佐々木さんを連れてどこかに逃げ出してしまいたい」という気持ちが芽生えるのを感じました。

同時に自分の無力さを感じます。

普段の私は、デキる男を必死に演じている、パチンコ・パチスロで闇金に借金をし、部屋を失ったホームレスの男です。

その現実を突きつけられている気がしました。

本当の私を知った時、佐々木さんは私には好意を寄せることはない気がします。もちろんガムを唇で渡すような甘くくすぐったい行為は絶対にないでしょう。

自宅から少し離れた場所に着きました。点滅するハザードランプが切なさを増幅させます。

「着いたよ」

「ありがとう」

私はドアを開けようとする佐々木さんをグッと引き寄せ、唇を重ねます。佐々木さんも答えるように抱いている腕に力を入れてきました。

舌を絡ませながら、佐々木さんの口の中にある、ガムを自分の口の中に奪います。

口の中にいっぱいに広がっていた、ミントのフレーバーが、甘いピーチのフレーバーに包まれました。

「じゃぁまた明日ね。おやすみなさい」

「おやすみ」

車をUターンさせ、公園の駐車場に向かいながらこう決意します。

もう、パチンコは止めよう。

闇金ももう、借りちゃダメだ!

そして、絶対まともになるんだ。

もうすでに、周りを悪魔に囲まれ身動き取れないところにいることに気付いていませんでした。

 

81話終了です。

 

また、闇金に手を出しました。どんなに決意をしても何度も繰り返してしまいます。この頃から闇金はそれを見透かしているかのようにお金を貸してくれました。今考えると恐ろしいですが、闇金が私のセーフティーネットになっているような感覚になり、抜け出すことができない状態になっています。

パチンコ・パチスロもそうですが、闇金にも自分の意志ではどうすることもできないほど依存していたのです。

 

まだまだ続きます。

82話↓

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